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ロンドンアート日誌

ロンドンアート日誌 Vol.1

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王室御用達店や老舗画廊が並ぶ、ピカデリー〜セント・ジェームズ界隈。このコンサバな地区にもここ数年、現代アートを扱うギャラリーが増えて来た。「ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ」で開催中の「サマー・エキシビション」(8月17日まで)を中心に、徒歩5分圏内でのギャラリー散策を紹介しよう。「サマー・エキシビション」は、1769年に創設された歴史と権威のあるアート展覧会。

sp_lonson_070709_01.pngphoto: Megumi Yamashita

おもしろいのは、一流アーティストと公募で選ばれたアマチュアの作品が同時に展示&販売されるところ。(非売品もあり)、3ヶ月の会期中、約15万人が訪れるという夏の社交イベントという趣きも強い。スタイル、価格、タイプとも千差万別の展示作品は約1200点にものぼり、版画、写真、絵画、建築模型から彫刻まで、部屋ごとに特定の会員が選んだ作品が展示されている。


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photo: John Bodkin, Dawkins Colour

 

ヤング・ブリティッシュ・アーティストたちも、もはやヤングではなく権威ある会員になりつつある御時世ゆえ、この世代の作品も年々増加中。トニー・クラッグが選出した彫刻の部屋では、リチャード・ロング、デイビッド・ナッシュ、アニッシュ・カプーアなどおなじみの作家の作品が並ぶ。ちんまりと積まれた灰のような作品は、それ風に見せる業師、ギャビン・タークの作品。 三角錐型のブロンズに顔料などを散らして創ってあり、息を吹きかけても「灰」は、飛びません。

 

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Gavin Turk Ash
Painted bronze 10 x 24 x 24cm
Courtesy of Live Stock Market

 

その隣は「18歳未満お断り」なる表示があるトレーシー・エミンが選者の部屋。物議を醸すことが,暗に期待されてるエミンだが、内容は意外とおとなしめという印象。16歳のデミアン・ハーストと死体の写真という、見慣れた作品を敢えて展示しているあたりは、期待に応えようという気配りかな、と。エミン自身の作品は開脚の図?ながら繊細な絵を展示。

 

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Tracey Emin RA Ruined
Acrylic, oil pastel and pencil on canvas 184 x 184cm
(c) The Collection of Sir Elton John and David urnish

 

彼女のネコやトリのドローイングが、マグカップやTシャツにプリントされて販売中といういう方にショックを感じる人もいるかもしれない。

 

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photo: Megumi Yamashita

 

そんななか目を引いたのは、7月28日までNYのMoMAでも個展を開催中のシガリット・ランダウの作品。バラ線でできたフラフープを裸で操る女性を映した映像作品は、痛いながら美しい。

 

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(c)2008 Sigalit Landau

  

ロイヤル・アカデミーをあとにし、大通りをフォトナム&メイソン側に渡って「ホワイトキューブ」へ。1997年に話題をさらった「センセーション」展に出展された後、倉庫の家事で焼失してしまったジェイク&ディノス・チャップマンの「ヘル(地獄)」なる作品が4年間をかけて再製作され、「ファッキング・ヘル」として地獄より生還。7月12日まで展示されている。ミニチュア模型による「ジオラマ地獄絵巻」を納めたガラスケースが9個、卍型に陳列されているというものだ。何万体にも及ぶと思われるナチ兵やブタ、ガイコツたちが繰り広げる殺戮&残酷図、積み上げられた死体の山や人肉の解体場など、これでもか〜! というほどディテールまで入念に創作されたミニチュア作品は、手工芸品という観点からしても圧巻。

 

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(c) the artist/courtesy Jay Jopling/ White Cube

 

が、とにかく病的なほど執拗な作品ゆえ、いったい何か言いたいか?と息苦しさを感じていると、おや? ひとつのケースの端にヒットラーがイーゼルに向かって絵を描いている姿があるではないか! それをガイコツたちが「ほお〜」という感じに取り囲んで鑑賞している。

 

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(c) the artist/courtesy Jay Jopling/ White Cube

 

見逃す確立も高いゆえ、見つけたときは感動もひと塩。ヒットラーとはいえ、地獄に仏に近い。更にその奥の小部屋に進むと、ヒットラーが描いた絵の実物に直接、ヒッピー調の虹や花などを描き込んだ「もし、ヒットラーがヒッピーだったら、私たちもどんなにハッピーだったろう」という一連の作品へと続くという展開。

 

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(c) the artist/courtesy Jay Jopling/ White Cube

 

く−っ、チャップマンうまい! すばらしオチ。すっかり丸め込まれてしまい、ちょっと張り込んで、サイン&コゲ入りの限定カタログを購入してしまった。175ポンド。

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photo: Megumi Yamashita

 

「ホワイトキューブ」の数件先、「エスタブリッシュト&サンズ」のギャラリーへ。  このところ流行の「デザイン・アート」を扱う気鋭の家具メーカーのギャラリーだ。バーゼルのアートフェアでも展示されていたプロダクトデザイナー、バーバー・オスガビーによる「限定版アート作品」を展示中(7月18日まで)。ミニマルで機能重視な作風で知られるデザイナーだが、アートとなるとこうきたか。

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photo: Mark C OFlaherty

 

普通の家具作品の方がずっとイイなあ、というのが正直な感想だが、1点1千万円の作品でもかなり売約が入っているとか。うーむ。
 

そのまま、セント・ジェームズ・スクエアに出ると、6月30日にクリスティーズのオークションで競売にかけられたジェフ・クーンズの「バルーン・フラワー」が野外で展示中だった。 こちらは、なーんと約26億円で競り落とされている。クレジットクランチが問題になる昨今ながら、アート界はまだまだ元気がいいんですね。

 

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photo: Megumi Yamashita

執筆:山下めぐみ
ロンドンも移住して15年。建築やデザイン、アートに関する記事をカーサ ブルータスなど日本の各誌に執筆


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COMMENTS

いいレポートですね!ロンドンを旅行したときのことを思い出しました。

>一流アーティストと公募で選ばれたアマチュアの作品が同時に展示&販売される

↑こういうのって、作品自体しか評価指標がない点で、ある意味鑑賞者が試されてそうですね。個人的には、あんまり外の評価云々を気にせずに、自分自身が好きな絵画に出会えるような環境があればいいなと思います。

ほし 2008/07/09 04:39

4年間かけて作られた「ヘル」凄くリアルですね。
緑の中のバルーンフラワーもなかなか素敵ですが、26億円とは!

ララリーマン 2008/07/10 12:07

写真がいっぱいあって楽しい! アートの本場はニューヨークかと思ってたけど、ロンドンも奥が深いですね~。

川崎ローズ 2008/07/10 12:38

ロンドンは自由ですね。

「ヘル」がすごいです!ユーモアとメッセージ性が両立してます!
聞いたところによると、↓のヒトラーの直筆絵は、ものすごおく高かったそうで。。。それに描き足してしまったなんて!

>ヒットラーが描いた絵の実物に直接、ヒッピー調の虹や花などを描き込んだ

衝撃的な作品を作るには、お金がかかることもあるんですねぇ。
庶民の私はただびっくりです。

つかさぼたん 2008/07/10 05:45
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