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展覧会レヴュー

2008年10月25日(土)~2009年1月12日(月・祝)  広島市現代美術館

 

  10月25日から「第7回ヒロシマ賞受賞記念 蔡國強展」が始まった。午後1時、右手に原爆ドームのみえる広島市の太田川河川敷から、2、3発はゆるく、その後つづけざまに9秒間、千発の黒色花火が打ち上げられた。青空に墨を流したような黒雲の浮かぶ一幅の山水画が現れた。原爆の犠牲者への鎮魂と世界平和への願いを込めたメッセージでもある。


  美術館では、中国の空港で没収された無数のハサミやフォークなどが刺さった複製のワニが出迎え、ぎょっとする。反対側にはブッシュ大統領やオサマ・ビン・ラディン、整形美人など、さまざまな出来事がびっちり浮彫りされた約10メートル幅の石灰岩の作品があった。両者とも9.11以降の世界に現れた事象を表現したもの。


 過去の爆発プロジェクトの映像も、原爆ドームを右下に表した火薬ドローイングも興味深い。火薬ドローイングは厚手和紙に火薬を置いて爆発させ、水墨画のような焦げの画で、蔡國強独自の表現である。


 地下展示室では半円形の壁面に、蔡の最大の4×45メートルの『富春山居図』を借りて描いた火薬ドローイングを展示。その前面下には60トンの水をたたえた巨大な水盤を造り、静かに波打つ水面にドローイングが写る。14世紀元朝末期の黄公望の『富春山居図』は初秋の江南を描いた画巻で、明代の収蔵家の死とともに焼かれるはずであったが、救い出され、一部は焼け焦げたが今に伝わる名品中の名品である。水盤をはさんで、いわきの人々との協力での砂に半ば埋まった廃船がある。その周囲には生のクリスマスローズが可憐に咲き、再生を表現する。この地下の静かな空間には、崇高な宗教的な空気さえ感じられた。 

《無人の自然》2008年 Photo by Seiji Toyonaga  提供:広島市現代美術館mujinnoshizen.jpg

《無人の花園》2008年 Photo by Seiji Toyonaga  提供:広島市現代美術館mujinnohanazono.jpg

   アメリカに移住後、原爆ゆかりの地で、小型の黒色火薬装置で小さなキノコ雲を上げた記録写真が回廊に並ぶ。94年広島で行った宙に浮いた円形の花火の『地球にもブラックホールがある』の原爆を意識した爆発プロジェクトが、この作品群の出発点と蔡は述べた。蔡はまた火薬のもつ暴力と美しさが、つねにテーマにあるともいう。


 なお「ヒロシマ賞」とは“平和を希求する「ヒロシマの心」を現代美術を通して広く全世界へと伝えるための行動を行った作家を3年に一度選考して、その活動を顕彰する賞”という。蔡國強は1957年中国福建省生まれ。86年から95年、日本に滞在。95年秋からニューヨークに在住し、中国の伝統や文化を背景に、現実世界をもみつめ、火薬を用いた壮大なプロジェクトで、世界に知られた現代美術家。ヴェネチア・ビエンナーレで金獅子賞など受賞。ニューヨークのグッゲンハイムの個展では過去最高の入場者数を記録した。
(2008年10月25日)

 

執筆:田所政江
1971年 早稲田大学大学院 文学研究科 芸術学博士課程修了
1984年 中国国立中央美術学院 中国美術史修士課程修了
1975-78年、1981-84年 北京滞在
早稲田大学エクステンションセンター講師、共立女子大学講師などを経て現在、
女子美術大学講師。「もっと知りたい中国Ⅱ 社会文化篇」弘文堂、共著 「現代中国事典」岩波書店、美術部門、共著など。

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大巻伸嗣@横浜「Memorial Rebirth」の現場から Scenery of Memorial Rebirth スライドショー

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